オーガニックが変える明日

オーガニックが変える明日

つじ よし ひこ
辻 吉彦
TSUKURU 株式会社 代表取締役

南米・ブラジルとの出会い

2003年から2004年の年初にかけ、およそ2か月間南米を旅行しました。 さまよ
そのうち1か月はブラジル・アマゾン流域を彷徨いました。地球の肺と 言われるアマゾンの現状を肌で感じておきたかったからです。 私がそこで感じたことは、アマゾンでは「アマゾン流の生活」が営ま れているということです。当たり前のことといえばそれまでですが、日 常の生活の中で、明日の糧を得るために材木を伐採し、伐採する材木が なくなれば、次の材木を伐採する。そして材木を売り、手に入れたお金 で木を切り出した土地に火を放ち焼き畑を行い、家畜を放牧する。この ようなことが繰り返されていました。当時は、まだ農地の管理や再生産 についての考えは、一部の人にしかなかったといっていいかと思います。

旅の醍醐味

海外を旅する醍醐味は、何といっても知らない土地で知らない人と出 会うことです。日本国内の旅行でもそのような経験は旅の醍醐味ですが、 海外ともなるとそこから受けるインパクトが違います。言葉の壁、文化 の壁、習慣の壁、乗り越えなければならない壁が多ければ多い程、それ を乗り越えた先で出会う人からは大きな啓示を受けることになります。
のぼる 私は、アマゾンで一人の日系人の方と出会いました。坂口 陞 さんです。
坂口さんは1957年トメアスに移住し、苦労の末の「アグロフォレストリ(森林農法)」による農業を考えだした方です。 インターネットサイト「ブラジル移民の100年」によれば「アマゾン のアグロフォレストリ」は「アマゾン河口近くの大都市ベレンの南方 250km、パラー州のトメアスーで、1970年代以降日系農家が、環境負荷 の小さい独自の熱帯農法を実践し、事業として成功し、世界的な注目を 集めている。」と紹介されています。 さらに「現在、アマゾンでは、森林を伐採し牧場開発が進んでおり、 環境破壊の元凶となっている。トメアスーのアグロフォレストリでは、 耕地一筆25ha の農業収入が同じ地域の1,000ha を超える牧場に匹敵し、 その牧場の雇用は2~3人の牧童のみなのに対して、25ha の耕地一筆 で常雇換算10~20人分の雇用を創出する。また、ひとつの畑に多数の作 物を植えることにより、一つの畑から絶えず生産があり、かつ、農地の 区画ごとにさまざまな作物の組み合わせで栽培することで、経済的にも 安定的な収入を得ることができる。ブラジルの連邦や地元州政府では、 焼畑をして転々と土地を移らずに定着するこの農法を非日系の小農にも 奨励している。 日系人は、かつてジュートと胡椒の栽培に成功し、アマゾンの熱帯農 業に貢献したが、この農法によりアマゾンをはじめとする熱帯林の保全 と農業の両立に対し、多大な貢献を行うとしている。」と結ばれています。
(参照 http://www.ndl.go.jp/brasil/column/agro.html) さて、そんな坂口さんと出会い、私は旅の醍醐味である人生の啓示を 受けます。その内容は次のような会話でした。 『辻君、私が実践していることはたいしたことでない。持続的に生活 するためにいい方法だと思ったからだよ。森林の消失やアマゾン川のピ ラルクなどの魚の減少は、確実に進んでいる。多くの貧しい人が(それ によって)生活しているから…。 私は言葉の捉え方ひとつで人の行動も変わると思っている。「自然(し ぜん)」って言葉の読み方はよくないと思っているんだが、辻君ならど う読む?
「じねん」と読んだら、意味が変わらない?』
短い会話でしたが、坂口さんの言葉からアグロフォレストリとは、『環 境が自ら然るべき姿を維持できるよう、人間が持続的に生活する視点を持って自然に配慮している農林業』なのだと学びました。

立ちはだかる「壁」

昨年、意を決して、これまでお世話になった会社を辞め、エナジード リンク「ORGANIQ(オルガニック)」の日本での販売を展開する会社を 立ち上げました。 有機素材をベースに100%天然由来原料でのエナジードリンク
「ORGANIQ(オルガニック)」は、ブラジルはもとより米国、欧州等で、 すでに各国の認証基準のもと認証を受け販売されています。日本でも、欧米の認証機関の認証が国内の有機 JAS 法と同程度の基準とみなされ た場合には、有機認証のマークを貼付して販売することが認められてい ます。しかし、残念なことにブラジルの認証は、まだ国内では認められ ていません。
「ORGANIQ(オルガニック)」に、有機 JAS 法に準じた認証マークを 添付して販売するには、ブラジルの原料を欧米に運び、そこでボトルに 充填しその国の有機認証を受けた上で日本に輸入するか、原料を日本に 運び、国内で充填して日本の認証機関による認証を受ける必要があるの です。 国内の有機農産物、加工食品においても認証にかかる経費がネックに なって、制度そのものがなかなか進んでいかない面があるといわれてい ます。間違いのないオーガニック食材を消費者に届けるのには、大きな 壁がありました。

健康志向のトレンドの中で

欧米をはじめとする先進国では、高血圧、肥満による心臓疾患等の増 加を受け、高カロリーな食生活を見直し、健康志向な「ヘルシーフード」 へのトレンドが起きています。 ユネスコの無形文化遺産に「和食」が認定されたことも記憶に新しい 出来事ですが、「healthy(ヘルシー)」「natural(ナチュラル)」とともに
「organic(オーガニック)」も最近の世界の食のキーワードになっています。 アニマルウェルフェアの例を挙げるまでもなく、欧米では「健康で幸 せに育てられた家畜を食べれば人間も健康でいられる」という考え方が あります。この考え方をフルーツや野菜などに当てはめれば、まさに「オ ーガニック」の考え方、「アグロフォレストリ」の思想にたどり着きます。 国産農産物の輸出倍増が叫ばれる中で、世界のトレンドに乗るにはそ れなりの「戦略」が必要になります。「オーガニック」は「和食=安全 でおいしく健康にいい食品」の一つの武器になるのではないでしょうか。

社会に貢献したい

これまで出会った多くの方のお陰で、「ORGANIQ」は4月より国内 販売がスタートします。 消費者の健康が増進され豊かな暮らしを続けて行ってほしいと願う気持ちはもちろんのこと、商品を通じて、遠いアマゾンにいる日本人や彼 らの作り上げた農法、それに地球環境の問題などへの理解を深めてもら えたら素晴らしいのではと思います。 さらに、近い将来、日本を越えて世界に日本の農家の技術やこだわり といった底力を発信できる日までがんばっていきたいと思います。 100年以上も前にブラジルに渡り、ブラジルの方々のライフスタイル を変えた先輩たちを見習って、自ら然るべき姿でいられる環境を次代に 残せられるよう時代に合わせ持続できる形を模索し続けます。

追伸

2月5日、うれしい知らせが届きました。 「第2回ソーシャル・プロダクツ・アワード」を受賞いたしました。 うれしい気持ちとともに、社会に少し認められ「もっとがんばれ」とい われているようで、気持の引き締まる思いです。